◆ラジコンヘリコプターを操縦する笑顔の道のり
テーブルを飛び立ったラジコンヘリコプターが会場を飛ぶ。見事に直線飛行、バックもだ。ピタリ停止で皆から拍手。笑顔で操縦するのはS社長。ホントに楽しそう。その後の「模型は天職、そう信じて経営に味方あり」とのテーマでの話は、さすが好きなことへのこだわりの追求は見事に花開くものだと納得がいく。S社長はラジオコントロールヘリコプター開発・製造、販売会社を営んでいる。この業界での信頼は世界一であると誇る。ここまでの道のりが楽しい。勿論、紆余曲折だ。
小学校時に模型ヒコーキに出会い、先輩が教えてくれる飛ばし方通りするとどんどん飛ぶ、面白くなって虜になる。小3時には科学雑誌で知ったエンジンのついた模型(3、600円)がどうしても欲しく、6ヶ月間(1カ月600円)小遣いを使わず3、600円を貯め、買ったという。友達が食べる飴菓子を横目で見て我慢して得た喜びだ。何しろ60年前頃の実話だ。好きなことには我慢ができる、そうでしょうと説く。
中学卒業時には、無線で飛ばす模型だ。そのためには金がいる。ならば、就職し、模型づくりに役立つ技能も身につけようと歯切り会社に就職、削る、切削する、穴開けの基本技能を学び取る。次にどうする、電気溶接だ。大手造船会社で溶接工として技術を身につける。活躍ぶりは、成績優秀者として評価を受ける。
さー模型を創る能力はついた。ならば経営の学びだ。目に見える独立事業はなにか、折良く薦めのあった洋食屋を開店。どう客様を増やすか模索する。その一例がコック帽を被り、真っ白なユニホームでたんぼ道を走り回っての出前だ。話題を呼んだ。それに料理技術を究めたこともある。ここまでの学びで、何事にも新たな事へのこだわりが癖となっていたようだ。従って洋食屋としても繁盛店となる。模型へこだわりは継続して来ており、どうする。次へのステップだ。開店時の借金返済のめども立った頃合いを診て閉店とした。
さあ、模型店のオープンへの挑戦だ。市場は狭い。心配感は家族からもでる。ならば、日中はお店の運営、夜間はコックでの働き、これで客数のメドまで繋ぐ。体に身につけた学びはいざというとき役に立つ。学びにムダはない。更にどうする、業界で名をあげること事だ。それはラジコンヘリコプター日本選手権への挑戦。そして見事に優勝。優勝機の製造はどこの会社、それが当社としての名声となる。
「私は運のいい男です。70才。好きな模型をひたすら追いかけてきた。好きだから、何があってもその実現に向けて近づいていくと明るい見方をしてきた事です。それには「学ぶ事」これを素直に重ねてきたことです」という。「このように人前で話す事の出来るのも貴方のお陰です。」と講話力セミナーでの小生の指導に感謝の言葉をかける。
日本一から、世界一へ。それは後継者の子息が果たした。ラジコンヘリコプター世界選手権で日本代表(ご子息も日本選手権優勝者)として参加、見事個人優勝を果たしたのである。親の事業への取り組み、自ら力をつける姿勢が示範力となると共に、S氏自身が子息の想いを第一としたとのことである。
運は自ら招くもの。棚ぼたはない。そこには、言い尽くされた「想いの挑戦 」、その実現に向けた「新たな学びによるインプット力」が不可欠である。
◆想いを描き、現実とのギャップを学びで実現へ
「学ぶ力」それは学ばざる得ない自分を設定することだ。とは若手社員研修で施す指導支援だ。入社2~3年社員となれば一通りのこなしはできる。だから、慣れたことをなれた方法で無理しない、できている敢えて無理しない維持型になる事もある。そこには志事感はないし、楽しさ、新たな喜びの享受もない。仕事は愉しむもの、その舞台は選び続けている企業である。小生の持論だ。ならば新たな楽しみはなにか、それは想いを創る事、それには、先と、現在の2点に着目する。
① 先に向けては、生涯現役として活躍できる想いを描くこと
現在の企業は入社であり就職でなかった人も多い。勿論好きな道(学業で職業・専門分野を選択学ぶ)としてスタートした人もいる。いずれにしても、組織の一員として選ぶことのできない担当する仕事を職業としてとらえ、ものにし、磨き上げていく事を楽しむ事だ。高齢者向け研修でのキーワードは生涯現役。それは売り物(専門力)がある事と確認している。その売り物は長年のこだわりの蓄積された力である。だからこそ、習得力の高い若きときから取り組む事だ。自分の想いを日々の活躍で近づけていく事は楽しい。たとえそれが僅かな累積であっても、僅差、微差はやがて大差となる。塵も積もれば山となるということだ。
② 身近に「やった・できたき」との達成感を重ねること。
目標管理の実践だ。これはできていないことを出来たにすることであり、そこには課すべき事がある。それは新たな智恵を産み出すこと。新たな智恵は新たな学びなくして産まれはしない。「できません」当たり前だ。少ない経験則の延長では新たな発想はない。本気で達成しようすれば必ず「学ぶことになる。学ぶとは読む、訊く、観る、試してみる、そして考えてみることだ。だからこそ「やった」との実感がわく。これが新たなキャリアを重ねることであり、それは将来に向けてのさすがの強み作りに繋がる。 ということだ。だからこそ仕事は楽しい、そして評価を得られる事は働きがいとなる。「学ぶ事」の自家発電による蓄電が、次ぎに向けての発想する基である。 このことは若手社員にのみに限ることではない。どのような立ち位置であっても共通する事は察しの通りである。一生勉強とはよく言う言葉である。
◆変える力は上に立つ人の「学びを生かす手腕」にあり
しかし、部下は組織では決定権は無い。良しとするのは上司、トップである。従って、上記の実現には環境と仕組みを整える事が欠かせない。部下は上役の器以上に大きくならない、企業はトップの器以上に大きくならないとは衆智の如く。上行えば、下これ見習う。トップ、上長の学びの姿勢が育成の風土となり、学びの活用が社員の新たな力を生かし育てることになる。 先般、若手社員研修でS市の煎餅店K社長の事例を紹介した。S市は煎餅産地で有名だ。最盛期は150店あったが現在は50店ほど。「弊社は若手社員のアイデアが力です。この小ぶりな昔ながらの煎餅、一枚ずつデザインされた袋に入ります。女性の持ち物に入りますし、食べやすい。大きな口を開けずにすみます。」「チョコ煎餅です。折れた、形がいまいちの製品を粉状にし、そこにチョコレート混ぜて創りました。」「ハート型です。袋にありがとうございますと書きました」いずれも好評です。と現物を見せて紹介した。受講者からの反応は、興味と自分もその気になれば考えられるとの感想がでた。
「お陰で弊店は続いています。以前は、こちらが「ああしろ、こうしろと」指示だけをしていましたが、トップとしての学びの場で気づいた事を実践してみました。」とK社長は「にこっ」とする。「学び」を企業活動に生かした一例だ。 革新との言葉が常態化しているが、単なる心意気にせず実態化するにはどうしても「学ぶ力」「学んだことを生かす」施策は不可欠である。それは「変える能力」となるからだ。
◆迎える年はさらなる希望の年だから望年会という
師走。「望年会」と称して20年になる。きっかけは地元企業S社の年末行事で講演したとき、ユニークなK社長が望年かと名付けていたことだ。理由はこの年にあった事を忘れるのでなく、あった事を土台に、新たな年にさらなる望を持って気持ちを固めるほうが浮き浮きしますよ」とのことだ。なるほど。まさに出来事の事実は消せない。たとえ上手くいかなかった事であってもだ。いや忘れさせてくれないこともある。勿論上手くいったことはそれを新たな基準としてさらなる期待を創ったことになる。単なる一過性、たまたまでは一発屋のたぐいであるからだ。 過去は変えられないが、自分と未来は変えられる。もし上手くいかなかった事でもそれをいかす事によって、事実は変えられないが価値は変えられるということでもある。 「望年会」新たな想いを創るきっかけとする。そこには「新たな学び」を模索する楽しみもある。この時期、今年を振り返り、年初の抱負(想い)のPDCAのサイクルを確認し、新たな年に向けの望を見いだす機会としたいものである。そこには「新たな学び」の模索も必ずある事であろう。
頭書のS社長。「話題のドローン、さらなる学びをしています」と笑顔で話す。明るい人だ。内助の功も得て、変化に対応していく楽しみを常に追いかけているからであろう。ふと、S社長所有の飛行場(ラジコン用)で、小生もラジコンヘリを飛ばしたいなーこんな想いを描いてみた。壊すのがせいぜいだろうか・・。
|