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  ホーム>髭講師の研修日誌

 本コーナーでは、"髭の講師"の澤田が研修で実際に体験し、見聞した事例を、日誌風に纏め報告しています。
 これまでの研修日誌はコチラ。

 

◆N師の生き方に学ぶ

  ”卒寿超え 生きる生き甲斐なになさむ「積小為大」と手の甲に書く”。この短歌の一首は N氏の年賀状に記された言葉である。N氏は90才。見事な人生を歩んできた方である。その職業人生は、日本橋の洋品関係企業に入社し、重職を経て、創業、高級用品を扱う卸業として国内外の有名店との取引事業を経営されてきた。そして、85才でその権利を「この人に・・」と無償提供した人である。
 日常生活も実に見事。AM3:00に起床、軽く10分の運動を行い、般若心経の写経をする。既に1,300枚を超えたと言う。5:00には近隣の朝の学習会に行き、お世話役をする。週1回は6:00から筆者等の経営者のモーニングセミナーに出席、時には進行役や講話者も担当する。特技は仏像の木彫り観音像を見事に彫り上げる。ここ数年は市民展に出品し、昨年は釈迦如来像は賞を得た。実はこの木彫りは75才からはじめ、それに80才から始めた短歌は毎日一首は詠んでいるし、はてまた詩吟は3年前からである。90才まで車を運転し、風邪もひかず健康そのもの。但し膝は良く杖をついての歩行であるが・・。秘訣は「明るく生きる事、楽しむ事である」「明日は明日の風が吹く」というが、実にきちっとした生活ぶりであり、学ぶ気概も凄い、そして人への面倒ぶりも実に見事な人であった。年賀状は、旅立つ前に書かれたものである。

◆積小為大とは

 積小為大とは、二宮尊徳翁の言葉で、この意味は、「小さい事が積み重なって大きな事を成すことであり、従って、大きな事を成し遂げようと思うなら、小さい事をおろそかにしてはいけない」という説きである。N氏の成し遂げて来た実績はまさにこの言葉に等しい。例えば「海外との新たな、取引は英文によることになる。だから、不得手な英語であったが必死で、勉強した。いまでは、英文でのやりとりでトラブルもない。木彫りの仏像も、75才からはじめ、基礎からしっかりと学び、コツコツと何日も彫り込んだ制作作品である。また、1,500枚に及ぶ般若心経の写経も毎朝、一枚ずつき書き上げた蓄積である。
 90才。N氏の新たな目指す事は何であったのだろうか。ここまでの、学びと業の経過の重ねだろうか、はてまた、新たな想い、目標を掲げてのスタートなのであろうか。
 師走のある日、用事でお出かけし、帰宅した玄関で、そのまま旅立ったN氏。一週間前に共に学び合う場で語り合った筆者である。「100までは、・・・」と我らも思い巡らしはあるにせよ、見事な人生であったと賞賛し感謝でお送りした。
 まさに、N氏の、頼られ、お役立てができる現役の活躍で関わる人を鼓舞する人生であったと感服の至りであるからだ。

◆生涯現役で活躍する決め手を持つ

 筆者の研修のテーマに、「人生100年時代、いかに生涯現役で活躍する自身を育て上げるか」がある。「現役」とは、「人のお役に立てる決め手を持ち、人から頼られる存在感のある人物として、生涯にわたって活躍できる人、そしてそれを楽しめる人」と意味づけている。その決め手は、必ずしも周りを驚かすすごいものでなく「一隅の花」でもよい。派手さや、表舞台に立たずとも、陰の立場で、さりげなく貢献できる存在の人でも頼られる人は多い。それは、故ノートルダム清心学園理事長のシスター渡辺和子氏の『置かれた場所で咲きなさい』という著作でも説かれている。
  実は、筆者も一隅の花と認識し、敢えて表現すれば、野に咲く花として、市井に咲いている花々にエネルギーを届け、置かれた場所で咲きほこれるようにお役立てするサポターを自称している。 それは、研修講師として50年、のべ6000日にも及ぶ研修実践の日々、受講生に寄り添い、現場、現実、現人(個々人)の指導、支援を第一義として実践指導を進めてきた賜である。まだまだ、小さな花であり、実りの味も不十分であるが、筆者なりの積小為大の誇りとして現役でお役に立てを楽しんでいる。

◆現在の活躍舞台で生涯現役の決め手を創リ、磨く

 さて、自分の決め手を持ち、存在感を表わすには、一朝一夕にはできることではない。それには、職業人生に就いた新人の時代から将来を見据えて、配属された部署で得られる体験を「将来の稼げるパワー」をものにするこの意識で実践し続けていくことが肝腎である。その活躍舞台、新人時代、リーダー、ベテラン社員と変わって行く。この舞台で期待に応えた活躍が稼げる無形の財産を蓄え、磨きを掛けていく機会である。生涯現役としての決め手はこの職業人生で培われるのである。確認して診よう。

新人の時は、決め手づくりの基本を学び、職場に新風を吹き込む存在
◎リーダー時は、人を生かした実績づくりの責任感と指導力に磨きをかける。
◎ベテラン時は、信頼感を高め、頼りがいのある人としての存在感を高め、専門力にも磨きをかけ、後身にそれを継承していく。

しかも、これからの職業人生のあり方は一様ではない。もはや一社で定年まで勤めあげるという時代ではないとの考えもある。さらに、組織の一員としてチームに貢献するメンバーシップ型の勤務形態だけでなく、専門力を生かして複数の雇用関係を結んで勤務するジョブ型人財としての勤務形態もある。そして、この二つの勤務形態を組み合わせてハイブリッド(複合)型の勤務形態も今後進んで来よう。
 いずれにせよ、今後、職業人生は過去のパターンにとらわれていると、時代から取り残されることにもなりかねない。いずれにしても職業人生の活躍舞台を最大に活用し、将来に向けての決め手人間としての「稼げる能力」を育て上げねばならない。
 そして、やがて企業では定年になるが、生涯現役となれば、
◎ここからの活躍舞台は、自由に選択できる。活躍する舞台、その条件、働き方を自分で決定する。そこでものを言う決め手は、それまでの職業人生で蓄えた専門力であり、個人的に培った特技である。さらに、
◎活躍舞台は、社会活動であり、NPO活動、ボランティア活動、さらには人望により地域活動や組織団体における役員としての存在感も発揮される。

◆お役だてできる機会は、人物的影響力

 決め手を持っていたとしても、「この人に頼もう」との寄ってこさせる好感度高い人物的影響力が無ければそれは、宝の持ち腐れである。その、基本力は謝念を磨く事。それは、感謝の心なき人、慢心やうぬぼれにより人に尽くすことを忘れているような人は、「あの人に訊こう」「あの人に頼もう」と寄ってこられる人ではない。 高められた決め手の専門力・特技を持つ人の存在感は、自ずと活躍現場において「あの人に訊こう。頼んでみよう」との関係性が生まれている。だからこそ、この機会に感謝しお役立てができる。実はこの機会の積み重ねが、さらに決め手を磨き、存在感をより確かなものにしていく。キャリアを高める本質はここにある。

◆感謝話法の向上を指導

 専門力を高める直接指導はできない筆者であるが、人間力を磨き、決め手を生かす上での伝わる能力、それは感謝話法の効果的実践と説き指導しているのが感謝話法である。
感謝話法とは、お役に立てる機会としての、訊かれたとき、頼まれた事への「感謝の心を持って」「感謝の心で話す」、そして相手の話を「感謝の心で聴く」、「感謝の心で実践する」、そして、より良き状況が現実化したときの感謝の心を「おかげさまで」と届ける話す力と定義している。例えば、新人が専門力を蓄えるには、ひとりで行うことはできない、だからこそ先輩からの指導は必須。ならば、先輩から指導していただいた時には、「お忙しいところ、ご指導いただきありがとうございました」と素直に感謝の心を表わすことで、先輩も指導意欲を高めてくれるのは自然な流れである。

 以後、新人時代から、担当社員となり、やがてリーダーとなり、ベテラン社員として存在感ある活躍へと歩みを進める。そして起業への舵を切る。そのどのときにも不可欠なのが感謝話法の活用によるコミュニケーションである。それは生涯現役で活躍する「稼げる力」を体得す積小為大の過程だからである。だからこそ指導は楽しい。

 人生100年時代、どんな舞台でも「自身の活躍が生きている」でなければ寂しい事である。特にお役だてできる専門力を持ち得る自身でありながら、お役立ての機会を創り、生かすことをせずでは、自身を粗末にする。何歳になっても寄ってきてくれる人がいて、「ありがとう」「おかげ様」との生涯現役として充実した人生を謳歌しよう。 年初の想いはどんなことであっただろうか。すでに実現に向けての活躍はスタートしていることであろう。”大事をなさんと欲して、小事を怠り、其の成り難きを憂いて、成り易きを務めざるもの、小人の常なり。夫れ小を積めば、即ち大となる。万石の粟は即ち一粒の積。・・・”(大きな事で成し遂げたいと思っていても、小さなことをさぼり、なかなか成功できないと憂いて、できることをやらない人が思慮の浅い人間のパターンである。小さいことを積み重ねて行けば、大きな事になる。万石の米は、一粒の米が集まったものだ)と、報徳記には記されている。再確認し、指導現場での小さなことの最高実践を約し,N氏へ感謝の合掌とする。

◎今般、人生100年時代、生涯現役で心豊かに生きる 実践!!「感謝話法の極意」を傳書房発行・教育評論社発売として、執筆、出版いたしました。お役立ていただけたら幸いです。

(令和4年1月 研修・講演髭講師 ビジネス教育の(株)HOPE 澤田 良雄筆)

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