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 本コーナーでは、"髭の講師"の澤田が研修で実際に体験し、見聞した事例を、日誌風に纏め報告しています。
 これまでの研修日誌はコチラ。

 

 ベテラン層社員の研修は楽しい。それは、ここまでの活躍に自信と誇りを持って更なる貢献するとの覚悟を持った社員だからである。先日、大手鉄鋼所二社様のベテラン層研修に出講した。長年継続してきた研修であり、担当者とのパートナーシップを生かした指導・支援においては、受講者から、あらかじめ日ごろの活躍ぶりを事前にレポートとして提出していただき、この現状確認に基づいて、今後の「志事(しごと)」を楽しむように支援する事である。志事とは、志をもっての取り組みのことであり、楽しみ方は、自ら築いてきた当社の発展に、更なる伸展をさせる貢献力を楽しむ、気概で、明るく物事を捉え、建設的な考えを持っての活躍を成す事である。ちなみに、以前よくこの層に評価された「今更無理することはない」「大過なく」とのモチベーションの低い取り組みは、気概の無い死事と称している。

 このような、仕事ができる、人を育てる、企業の課題が解決できる、こんな逞しさを持ちうるベテラン層社員の活躍は、企業の更なる伸展の生命でもある。それは、環境変化は,常に進化する企業活動を求める。とりわけ現況コロナ感染防止対応など厳しい条件を経ての現在である。だからこそ、豊富な実績と能力を有するベテラン社員パワーによる本物、一流、本格化、オンリーワンの企業の売り物をより強くしていかねばならない。さらに、よく言われる若手パワーを生かせとの言葉にも、若手社員の発想の実現には、このベテラン層の力が不可欠であり、この組み合わせがあってこそ、若さの生きた活力なのである。

 受講者の事前レポートにもこの点での活躍ぶりとして、若手との交流、そして共同での新方法の試し、開発などの記述は多い。例えば、

*先ずこちらの挨拶、笑いも必要その為の雑談で和ませる。
*世代の違いの対応にTV、漫画、流行に関する情報収集で会話する。
*相談に乗る *時には食事する
*若い人がどうのこうのいう批評家では無い。
さらに、技能継承の指導機会でも
*伝える技術の習得と伝えるべき内容の整理を行い、自らの経験・知識を生かして話す 
*押しつけにならぬよう相手の考え方をしっかり聴く
*新規仕事の対応には、若手と現場を
下見、危険箇所を洗い出し、相互確認で、安全第一業務遂行を共に実践する。
 さらには、
*自分なりの業務のやり方が固定観念で堅くならぬよう、上司、部下の考え方を聞き、よい点は取り入れ、新しいやり方の試技していく・・・等が実践事実として記されている。
いかがであろうか、理解頂けるように「高齢者は・・最近の若い社員は・・・」等と吐き捨てる捨てる台詞の人はいない。勿論、世代ギャップの課題を超えての対応である事は計り知ることはできる。

◆ベテラン層が持つ魅力を確認して診ると

それでは、ベテラン層の持ち得るパワーを確認して診よう。それは、
①ひとつは、技術などの専門力であり、エキスパート、スペシャリスト、あるいは職人ワザ、匠、マイスターなどと称されるレベルの力量

②もうひとつは、豊富な経験で関わった多くの人との出会いで磨かれた人間力

以上の2つの強みのパワーを併せ持つことで、困難さに対応し、解決する力量が期待され、しかも、かかわる人に対する良き影響力で貢献を成している。この貢献力は、自然と後継者の育成にも繋がっているのが現実である。何故かという言えば、被指導者が「誰に教わわりたいか」この条件に求めるキーワードが「、憧れの人か」であり、憧れとは、専門力による一目おかれる実績と、あのような人になりたいとの人物的魅力だからである。

◆今後はおかげさま作りの貢献の楽しみ

 従って、現状からの志事のキーワードは、「おかげ様づくり」である。なぜなら、「さすがの技術力・専門力をたくさん持っている人」「経験豊富な人」として一目置かれる存在」になるには、多くの方に指導をいただき、協力をいただき、その結果として現在があるからだ。時には「自分が頑張ってきたんだ」との主張もあるが、大方は、生かされてきた自身があることも事実。従って、これまで自身が得た「おかげさま」の体験は豊富に持ち得ていよう。だからこそ、現在、又、今後は、それを現場にお返して、新たな貢献できる楽しみとしていくことにあるのだ。その楽しみが「おかげ様」づくりと称している活躍なのだ。 
 ならば、
職場、企業が期待する活躍ポイントは何か、それは次の6点である。
   さすがの専門力を生かした新たな業務に貢献する。それは新しい、初めて、珍しい、独自のものへの関与
   経験による成功失敗から得た経験知を生かした業務の改善(創意工夫)の実践
   第一線の活躍だからこその、現実、現物のデータに基づき、組織での難しい案件の解決に貢献
   卓越した技能は社の財産、だからこそ分身としての技能承継の実践
   後輩管理者の補佐、支援に貢献
   ハイテク技術を生み出すもとは、暗黙知、だからこそ暗黙知をさらに究める

 いずれも ベテラン層にとっては、豊富な知識、体験を生かした施しにより、「おかげさま」の感謝と実績を残す活躍ぶりとなる。この実績は、企業の歴史に名を残す事もあり、施した相手の記憶に残り、退職した後でも、お役立ての機会の声がかかり、生涯現役としての活躍舞台が提供されることにもつながる。

◆更なる年輪を加える楽しみ

 その為には、進化し続けるベテラン層で無くてはならない。事前レポートには専門力をより高める実践を問い、その実践ぶりが紹介される。例えば、
*専門力の高めを自己啓発 
*進化するIT技術への対応 
*一段高い目標への挑戦 
*自ら国家試験を取得、
*技術スタッフからの学びによる専門知識向上 
*電子化業務移行へも苦手意識を超えて、研鑽、考える、使いこなしの実践 
*常識にとらわれず、見方を変える事が重要と心する 
*現状把握から、より良い条件づくりの改善へ 
*何事にも興味、疑問を持ち、楽しく知識を深める心掛け・・・。


と記されている。ご理解頂けたように、経験則に固守しての「絶対このやりかたしかない」とか「私の考えに絶対まちがえはない」との思考枠が固まリによる、意固地な人、頑固な人、人の異見(自身と違う考え)は聴かない人、馴れたことを馴れた方法でやる人の現状維持型の人ではない。まさに、いぶし銀に、新たな学びによる新たな考えを生み出す磨きはまぶしい。それは、経験則(経験・体験から創り上げた最良の方法)にプラスして変えていく働きかけであり、時には改革的創造性も遺憾なく発揮していく実践であるのだ。

 実は、ベテラン社員にとって、現状を変えることは自己との戦いといわざる得ないであろう。何故かと言えば、積み重ねてきた手腕に自信と誇りを持ち、一所懸命やっている思いは強いからであり、また、経験則にはまっていれば安心感があることは確か。例え、視点を変える、切り口を変える、発想を変える事が大事だと言いつつもである。

 しかしながら、現状維持は退歩となる。「古い」「意固地」「頑固」は自身の存在感をなくしかねない。従って進化させ続ける自身づくりへの新たな学びとして、若い人の意見を聞く、他部門の人の視点の違いからの要望を聞く、専門部門の人からの知恵を借りることも良い。新たな学びから、生み出す智恵による変えた実践により新たに構築された経験則は、自身の年輪を一回り多くする楽しみなのだ。

◆生涯稼げる力を磨く楽しみ

 実は、年輪を加えることは、人生100年時代の将来に向けての稼ぐ力としての決め手を磨く事である。言い換えれば、自分の中に「売れる力」「決め手」を磨き、蓄える事に他ならない。だからこそ、年輪を大きくする自己研鑽の実践は楽しみなのである。その実践方法を確認してみよう。それは、次の6項目である。

①経験として体得した能力をさらに深める追求。それは、幅広く、深堀し、新たな要素を加味させる。
②資格取得の挑戦。「売れる力」は、単に何ができるか、とか、腕がいい、というだけでなく、社会的に認められる能力も必要。それが資格・検定である。
③ハイテク化に対応するためにIT専門家と親しく交流。それは、長年蓄積してきた暗黙知(カン・コツ)、の専門力や技術力は、デジタル化・AIに置き換えハイテクとして高度化する。この過程では、積み上げてきた知識、技術を組み込む機会への対応はベテランの成せる貢献。だからこそ、デジタル化に関する知識は必要である。
④話力を磨く。自己を生かせる機会に正しく伝えるためにも、どうしても話力を磨くことが必 須。会議、指導機会、提案事項の上申などの機会は多い。必要なときに、必要な事を必要な方法で話す力は不可欠である。
⑤現在を踊り場と位置づけ、一息入れて、今後に向けての志事ヘの取り組む。ならば、蓄積した決め手を確認し、改めて、何が好きか、何をしたいか、何ができるか、何を学ぶかとを体系化してみると良い。志事は、新たな目標を実現して、お役に立てた事実を示す事にある。目標の実現には、変える知恵を産み出す、その基は新たな学びによるインプットである。

この新たな一回り大きな年輪は新たな「おかげ様づくり」を実現していく。だから尽きない、寄ってきてくれる「居場所」がある。これは、ベテラン社員に対する「あの人いてくれるの」「あの人まだいるの」との周囲からの見えない評価がある現実をわきまえてのことである。

 人には限りない可能性が秘められている。現在の最高の強みも、更なる進化させていかなければ、人生100年時代の変化に対応した選ばれる強みにはなりません。

◆寄ってきてくれる人、貢献できる楽しみを高める11の確認

 ここまで、ベテラン社員の活躍の楽しみ方を考察してきた。その活躍の軸のおかげ様づくりの機会は、頼ってくる、訊きに来るなど寄ってきてくれる人によって実現する。それは、専門力、と人望を持ちうる「周囲の人からのいてくれる人」に他ならない。その条件を次の11項目まとめとしてみよう。

  現在の実力は、これまで関わった人のお力添えの「おかげさま」と感謝の心を持つた人
②ベテランの決め手は、卓越した専門力と人間性の豊かさ。だからこそ、この能力の施しを活かす。この施しのパワーは、「このことはあの人ならではのものだ」と評価され、寄ってこられる存在感のある人
③現状維持は退化なり、生涯の決め手を高めるのは、「志事観」を持つこと。その志は、周りに施すことにより磨かれる。難易度の高い事に取り組む機会は最善とする人
④「あの人がいてくれるから」と、たとえ職分の立場が下の立ち位置に変わっても、存在感があるからこそ「おかげさま作り」は成り立てる人
⑤常に経験則は新たに加えていくこと。そのためには、人の異見を聴かせていただくことへの感謝の心と自分の可能性を信じる人
⑥ベテランだからこそ人間的な実りがある。人間味を創るのは、日ごろからの周り人への「おかげさま」との謙虚さである。それは「実るほどこうべの垂れる稲穂かな。」の人
⑦「多くの方のおかげで、生かされている自分に気づく」 ことにより、謝念が深まる人
⑧技術継承は「自分の分身を宿すこと」。宿してくれる後輩に「ありがとう」との感謝を持つ人
⑨技術継承の指導は、やって見せ、言って聞かせて、させてみて、褒めてやらねば、人は動かじ、 「褒めてやらねば」とは、指導を受け入れてくれたことへの感謝のできる人
⑩相談を受けることは、「信頼される人」ならではのこと。信頼して相談に来てくれたことに感謝して傾聴する事。決して「ああしろ、こうしろ」の説法をすることではない人
⑪将来の決め手を作るためにも、そして自分の選択により人生100年時代の働き方を楽しむためにも、新たな学びを加えること。そして、教えていただける人に感謝する人

 と言う事になる。

◆新たな年、企業での新たな活動は、ベテラン社員の活躍が生きる

 今年の活躍からとらえた一考に「人には限りない可能性が秘められている」がある。それは、コロナ禍での諸制限に対応してきている昨今を診断する事でもその一端を診る事ができる。例えば、新たな生活様式、ビジネス実践法、対面を極端に減らす販売法、お届け法にはドローン活用等様々な苦難克服策を常識化してきたこともある。

 また、各自の見識の基本に、個人は社会との関わりでなりたち、さらに社会を形成する自然、多くの生物との共存もあり、それは地球、宇宙性もありととらえる必要もありと学んだ事もある。なぜなら、コロナ禍では、人に感染させない対応には、近隣、他の県・市・町との移動制限、外国との水際作戦等々の施策が施された。コロナは生き物、年末には、宇宙に行ってきました。との話題もある。

 さらに、企業活動にはSDGs(サステナビりテイ経営)が提唱され17項目により、環境等に留意しての、より良い世界を作る持続的開発力を求められている。

 新たな年の新たな企業活動も、この新たな常識を踏まえて、ベテラン社員のここまでの培ってきた高い能力を最適に生かす手腕は不可欠である。なぜなら、新たな一流、本物の活動常識を生み出す基を秘めているからである。それは、企業の蓄積してきた糧ともいえる。その活用の具体的着目点は、ベテラン社員のおかげ様づくりとして記した6条件を存分に楽しめるよう環境と機会と役割を整える事もその一策である。

 研修終了直後に受講者からの寄ってきてくれてのお礼の挨拶の交わしには、活力がほとばしっていた。

(令和3年12月 研修・講演髭講師 ビジネス教育の(株)HOPE 澤田 良雄筆)

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