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 本コーナーでは、"髭の講師"の澤田が研修で実際に体験し、見聞した事例を、日誌風に纏め報告しています。
 これまでの研修日誌はコチラ。

 
◆喜怒哀楽を引きずらず新たな手を打つ

「おおたに-!”」「しょうへいー!”」と歓喜の応援が続く大リーガーでの大谷翔平選手の活躍ぶりもあり、国内ではコロナ過での続く感染予防方法と協力要請、また、想わぬ大雨による土石流災害、そして、東京五輪実施に伴う諸処の決定と楽しみ方等々まさに喜怒哀楽の昨今である。企業活動でも様々な現実であろう。だからといって、喜びに浸る、悲しみに暮れる、怒り続けるなどはできない。ならば、どう次に向けて更なる強さづくりに取り組むか、どう直面の、あるいは今後、さらには将来に向けての課題を浮き彫りし、新たな手を打っていくかが肝心である。

先日、H県の経済団体での新任管理職研修に出講した。受講者の気構えは高い。それは,この時に選ばれたからこその「さすが〇〇さんは違う、やはりやってくれる。期待以上の活躍を魅せる」との覚悟の表れといえよう。とりわけ、織布、染色加工、炭素繊維複合材料製造の優良企業M社の受講者の勢いが目に止まった。そこには、創業53年「わたくしたちは常に「プラスをつくる」というキーワードを念頭に従来の考え方、やり方に縛られることなく,未来に繋がる・未来を変えるモノづくりをここ福井から世界に向けて発信し続けます」との理念の基に進展する企業だからこその管理職の気構えであろう。その過程は、受注生産から,提案生産、部品から半加工品、そして一環生産のブランドメーカーに、そして、現在では航空機部材の開発など見事な業績を重ねている。受講者からの紹介をいただきながら、「新たな仕掛けをものにする上で先ず,どのような働きかけが必要か」と支援策を巡らしてみた。それは理解し,納得し,共感を得て快く実践して頂く感謝の心での意思伝達である。

今回は、その実践スキルとしての説明・説得話法に着目してお役立ちとする。

●提案から実践への働きかけにより相手の変化

 ビジネスでは自分の考えた企画、提案を社内外の関わる人に理解して頂く説明話法、そして更に、なるほどと納得頂く説得話法が生かされ、意思決定,そして実践に結びつけていただくことである。この過程を一覧化すれば、

   当方の主張・提案内容がわかる(内容の理解をする)
   なるほど、そうだと思う(内容の納得をする)
   当方の気持ちと、相手が自分もそう感じる(共感する・自分にもプラスと共感する)
   よし検討してみよう・ ・・・・自発的意思が起こる
   そして,実践・・・検討。決断、実行への運び

 という過程をたどる。このプロセスで大事なことは、どうしたら相手が自分の想う方向に、知と情が絡み、自発的に実践されるように働き掛けていくことにある。

◆こう思う,なぜならば、と正しく伝える説明力を磨く

 その第一歩は、理解を促す説明力。説明とは「説いて明らかにする」と書くが、内容や根拠、背景、方法を明確に説いて明らかにし「わかっていただく」話である。「なぜ提案するか、なぜ依頼するかがわからない」と興味を失う。従って、この説明が「下手な人の話」というものは、「言いたいことがハッキリしない」「自分1人で飲み込んでいて、話の内容がつかみにくい」などとマイナスの評価になり、その結果、相手の納得が得られずに、協力や信頼も得られない。それどころか相手から「不信感」さえ抱かれてしまうことがある。

これに比べて、説明が「上手な人」は、周囲からの評価も高くなり、信頼を獲得できる。特に、ビジネス現場ではこの「説明上手」が生きてくる。

●説明するときの心得

 それでは、理解を助長する説明時の留意ポイントを8点提起しよう。

①共通の意味にとれる言葉を使う
②確かめながら話し、理解不足と察したときには、さらに丁寧に掘り下げる
③相手との視点を共有化するよう、話題を工夫する
具体的に話す(実例、引例、比較、統計などの活用)
誤解しやすい点に特に配慮する
  言葉だけに頼らない(物の活用、場への案内、視聴覚に訴える)

 昨今はパワーポイントで創った画像をプロジェクターで投影する方式が多用される。綺麗であり、動きもあるし、前と後の比較を明確に見せられる。データーもグラフ化で理解しやすくそれに、説明内容を短文にしての簡潔さも良い。それに、直前での修正も出来る。しかしながら、盛りだくさん、凝りすぎて自己満足に陥ることも無きにしもあらず。ぜひ理解を頂き、納得頂く事の整合性と、時間対応をきちんと踏まえて整えるとよい。また、実物の利用も効果的である。それは、品物を持参し、見せる、使わせる、食べさせる、触らせる、体験させる方法を組み入れると実感が湧き、正しく伝わる。

  主要点の繰り返し、念押しを適宜施す
⑧そして「質問の活用」である。

 相手にはそれぞれ特性(理解レベル、立場、興味ポイントなど)がある。従って聞きたいこと、確かめたいことの機会がなくては不充分。勝手にわかってくれただろう、らしい、ようだとの都合のよいとらえ方や、ましてや、わかったはずだ、べきだ、もんだとの上から目線は避けたい。質問することはそれだけ興味を示し、協力に前向きに関わって来た証である。興味がなければ聞き流し対応が精々である。従って、質問には感謝の心で応答する。

●理解が高まっているかを診断しながら進める

 一生懸命説明する、その時注意しなければならないことは一方的に話し続ける事である。肝心な点は、聴き続け、理解を深めているかの観察である。その方法は次の4点を心する。

①うなずき、相づち等の反応に気を配る・語りかけ、問いかけ、質問をする。
②相手が興味をおこし、興味が持続しているかどうかを観察する
③相手のうなづき、あいづちの打ち方,目線の輝きに注意をする

◆「なるほど」と納得させる説得の進めかた
 
 理解頂けた感謝に,更に深めて納得への進めである。まず、「説得」とは、相手を説き伏せることではなく、ましてや議論して言い負かすことでもない。相手が“自発的”に動いて頂く事が、説得のねらいである。従って、説得する場合の基礎条件は、

提案が相手にも「お役にも立てる」との信念となっていること
②説得者として、意欲、熱意、誠実、信念をもってその場に対応すること
③相手の条件を把握、分析していること(理解レベル、キャリア、自分との人間関係、性格、年齢、立場,自部署との関係等)


であり、説得話法の目的とする「納得を得る感謝」その為には,なるほどと明確なる根拠を示す事が準備段階で必要である。

●説得力を高める7つの要素

 説得力がある話には次の7つの要素を持ち込むことにより、理解と納得性が高まる。それには次の7点の工夫である。

①『論理性』=「こうです。なぜなら‥だから‥です」という明快な論旨とスッキリした話しの進め方がよい
②『イメージ性』=あたかもその状態が目の前で起こっているかのように、イメージ豊かに話す。人は理屈では動かなくても、自分でのイメージに納得する事が多い
③『実証性』=論理やイメージを数値や、事実で実証できれば説得性は強まる。以前と現在そして今後(依頼事項が成されたときの状態)に関する数字やビジュアル化で工夫した比較対象での提示は効果が高く、また影響力のある人の賛同や、実践しての評判などを紹介するのも効果的である
④『実感性』=製品、商品などの利用者の感想など紹介した折には、「利用して頂いて本当にありがたかったのです。そして、「私はこう感じ、こう思います」と利用者の声に対して、自己の熱き思いの実感を語る。その姿に、本気度が相手に伝わる
⑤『共感性』=「よくわかります‥なんですね」と相手の立場に深く感情移入する
⑥「理解性」=デジタル機器を活用。パワーポイントで創った画像をプロジェクター,パソコンで投影する方式の活用。綺麗で動きもあるし、前と後の比較も明確に理解できるし、データーもグラフ化で理解しやすい
⑦「体感性」=実物の利用。品物を持参し、見せる、使わせる、食べさせる、触らせる、体験させる事を組み入れると実感が湧き実践への心が弾む

●説得のすすめかた6段階

それでは,説得場面でどう順序立てて進めるかを提案してみよう。それは,次の6段階法を一応の軸とすると良い。それは,現実には相手の心の動きは生きものだからである。

◆第1段階「学ぶ」どこから話を切り出すか、そのヒントは相手から学ぶことである。即ち、相手の現状の状態、提案事項に関する知識、必要技術、関心度、興味、意欲、経験などはどうか、自分に対する好感感情はどうか、そして「不の条件」例えば不安、不満、不信、不快、不利、不足など本人のこうありたいとの心情の汲み取りである。これらがわかれば話の糸口が見えてくる。まず「訊く」→「聴く」。いわゆる質問力と聴解力を生かす。「訊く」で引き出し、「聴く」で心を汲み取る。こうすると相手は「自分の気持ち、考えを解った上でお願いしているんだとの安心感を抱き、こちらの話に聞き入る状況が整う。

◆第2段階「できるとの方法を示す」不安・不満等の相手の「不」の条件ついてその解決方法を示す事も含めて、こちらの提案がこうすればできるとのプロセス,実施方法を示すすると相手ができそうだと安心感が起き興味が高まる。

◆第3段階「結果を示す」実施による結果・ゴールを示すと喜びの想像ができる。

◆第4段階「相手にとってのプラスポイントとの明示」自分にとってもOKだとの理解は、共感を生む。そこには、断り、迷いからやってみようかの心の変化が喚起される。そこから検討してみようとの行動化への意欲が固まる。

◆第5段階「感謝の言葉」ありがとうの言葉は、引き受け、決断して良かったとの相手も当方にお役に立てる楽しみが沸く。完了までの協力関係→安心、信頼関係)

◆第6段階「今後の支援の約束」完結までは、想わぬ事態に対する支援や問題解決に向けた助言、支援、協働の約束はこんごの心配がなくなる。

 このように進めるのが理想ですが,現実はそうはいかない。相手からの条件も提示される。だからこそ、焦らず、お聴き頂いた事に感謝し、継続する。

●こう覚悟を決めた頼み方をすると相手の心情にやってみようかな・・・

実際は、「なかなかOKしてくれない」状況があることは承知の上である。それは、提案の拒否、理解不足、そんな必要はない、自分が関わる必要はない。新たな事などする事はない。一抹の不安によるこれは難しい、様子を見て考えたい、周りの目が気になる、あるいは、優柔不断なわかったけど考えさせてくれ、予算がない、さらには、前例踏襲での敢えて苦を好まない、今まででも十分だ、目一杯の日々だ、身体が心配、他にやれる人がいるだろう・・の心情があるからだ。
 とすれば、正しい理解を得るための地密な説明の重ね、必要性を軽んじているなら、提案事項によるメリットを強調し、興味を促す。不安があれば実施に向けた方法を提示し、可能性を説く。迷いや、気にする関係者には一緒に同行し自ら矢面に立つなどの支援。経済性のメリットについては、即、半年、中期、長期にと多面的視点から提示する。そして変えることの必要性を社、部署(相手先)の方針、目標と関連づけて説く。そこから再考を願い、協力いただける範囲の条件を導き出すことだ。勿論、依頼条件の練り直し、いざというときの代案の用意などの工夫を重ねれば良い。

そして、次の働き掛けも効果的である。

   相手の考えや立場に理解を示すと、自分は尊重されているとの自覚を持つ
   こちらの事情をはっきり説明すると、当方の一歩も引かない意気込みを強く受け止め,心がプラスに動く
   質問しながら相手の不安に対しては、何ができるかを気づかせ、自発意見を引き出すと自分も協力することができそうだとの関心を持つ
   相手の意見と当方の接点を見出し、可能性の手がかりを与えると、どう協力できるかを考えだす
   方法や見通しを具体的に示すと、自分もやれそうだなと可能性を見い出す
   期待していることを再度強めると、自分がしてあげなければの責任感が芽生える
   あなたにお願いするとの決意の固さを態度で示すと、とりあえず、できることだけは協力しようとの覚悟ができる        
との理解の深めと、自分への期待の高さを実感し、ならば何かできないかとの心情変化が起こるのである。誰でも「頼られる自分」は嬉しい。

●日頃の人物的影響力が問われる

 「好きな人の話なら聞く」「いやな奴の話は聞きたくないし、断りを考えながら聞く」この事を抜きにして受け入れ口は開かない。例え、その場でいくら好感人間を装っても人は信用することはない。改めて,人物的影響について確認して診よう。

①日頃からの対人関係や信頼関係がどうであるかが問われる。それは挨拶そのものの 評価がある。日頃の挨拶はその人の人間性を魅せている。

②出会いが初の時には「ハロー効果」が決め手。人は出会いの瞬間の好感度は、以後のやり取りに必ずプラス理解と対応を生む。仏頂面、品無しのマナー不足、心が伴 わないひと言など、みな不快の極みであり、相手の心情は推して知るべしである。

③「あの人の考えだから必ず結果が出せる。ならば自分も加わりたい」との意思が働くのは自然である。求心力といえるが、無理だと思いつつも協力できる方法を考え出すことは事実。現実はきれい事ではない。生身の人と人の関わりであるから日頃の謝念に基づく好感度や、実績如何が問われることも事実である。

 継続は力なり。「相手のお役に当てる」事を前提に誠実に、信念持って、熱心に説明、説得することは、やがて相手の心を変えさせる強さとなり、歩みよりの言動を生み出す。「時は熟す」だ。「こうしてみたらご協力いただける」との相手への示唆と支援を示し、決断を促す。決めのひと言は「こうしていただけませんかお願いします」とキッパリ言い切ることもよい。案外この言葉を求めていることもある。「無理にお願いされちゃって・・」言い訳できる逃げ道も欲しいこともあろう。

 今この時だからこその喜怒哀楽の特有の現象と対面する。ならば、どうする、新たな施策による新たな喜び、課題解決による進展は、協力者の「なるほど」の納得得ずしての実践では、実効は望めない。

 「できましたね。」「あるがとうございます」「おかげ様です」こんな相互に感謝の心で喜びを享受し合うことが次への新たな手の打ちを楽しめる。その,一助に当稿がお役に立てれば幸いである。

(令和3年7月 研修・講演髭講師 ビジネス教育の(株)HOPE 澤田 良雄筆)

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