活力漲る組織を創るリーダーの楽しみ方
この時期暑さを更に熱くするのが全国高校野球である。今年も話題の選手が多い。例えば本格派の右腕、150キロ超の速球、県試合4試合無失点、県大会4、5,6本塁打のスラッガー、チーム15本の本塁打髙・・がある。こんな各選手の凄さをチーム力としてまとめ上げ令和初の頂点に立つのは何処のチームであろうか。楽しみである。同時に各々の個の力をどう組識力として育て上げ、期待に応えた貢献をするか。この事は企業活動に共通することであると改めて考察する機会とした。それは、先日農業団体の研修を担当した。ご存知のとおり、農林業を取り巻く環境は激動しており、組織編成の有り様も刻々と変化している。従って、組織活動を牽引する幹部職は新しい息吹を発信し成就するよう尽力している現状だ。全国から参加した理事クラスの受講者はさすが、見識の豊かさと、人徳を供えた人である。そこには従来から積み上げてきた団体での活躍、あるいは行政、民間企業での実績もあるからこそ、団体の「高い信頼」に基づく備えの種まきとしての共済保険事業の推進者として選ばれた過程がある。そこで、改めて円滑な組織活動の有り様を確認し合い、更なる「新」を創造する活力の漲り策に着目しての研修とした。そこで今回は、メンバー力を生かすリーダーの愉しみ方に着目した。 組織とは「一人の力ではなし得ない大きな事業を効率的に成し遂げるためにつくられたもの」と表される。
◆メンバーの「異 」の持ち味を強い総合力に形成する
組織はいろいろな魅力を持った人が集まって総合力を発揮する集団である。野球、サッカー、ラグビーなど専門性を互いに担い合って勝負を挑むスポーツもあるし、リレー競争での成すべき同様の専門力を繋ぐチームもある。企業活動では専門分野での活躍もあるが、メンバーの活力発揮は多岐にわたる。現在は人の力量をIT化する事により、デジタル機器と人との組み合わせによる少数精鋭のチームとなっている。従って、個の力である「異」の魅力をいかに総合力として生かし得るかがリーダーの手腕である。「異」とは人は10人十色であり、知識、技能、体験、人柄、創造力、取り組み姿勢など各人各様、個性と評することもある.従ってリーダーはチームに発信した想いを、たて(上下)、よこ(同僚)、ナナメ(他部門・外部)の「異」の力を取り込んでチームとして、想いの実現を楽しむ事である。そこには、メンバーの活力漲る組織づくりの手腕発揮がある。
仕事ができる、人を生かせる、人を育てる、そんな逞しい統括者が組織の生命。
◆組織はリーダーのビジョンにより集約される
その第一歩は、ビジョンを示すことである。ビジョンとはどのようなチームにしたいのかを示す未来のメッセージである。このリーダーの示す方向、方針に対してメンバーに秘める希望が生まれる。希望とはどんな苦しい事状態に置かれても勇気が湧き活力が漲り、喜びを生み出す源といえる。では、希望に満ちた組織にはどのような条件があるのか確認してみよう。そこには次の5点がある。
①価値ある目標=成り行きでは達成できない目標の設定があり、使命感を持ち誇りを持ってその達成に向けて打ち込める目標
②目標の共有=価値ある目標は、構成メンバー全員がその価値を認め、個人目標への落としこみが同じベクトルで成される。それには適切な話し合いは欠かせない
③役割の分担=皆が主役を実感できる役割分担。そこには、責任の分かち合いと多能化によるメンバー間の支援関係がある
④相互啓発の実行=互いの教え合い、学び合いが協働力を高めチーム力をより強くする
⑤人間力豊かなリーダーの存在=見識の豊かさ、徳ある人間味、それに感受性の豊かさによる気配り上手なリーダーが要の人となっている
の5ポイントである。希望の実現は目に見える、見えない事があろうが皆で歓喜の瞬間を共有化できるには目標達成の場面が欠かせない。
◆漲るメンバーパワーを生み出すリーダーのしかけ
その実現にリーダーとして組織力をどう生かしていくか、その働き掛けは次の3点である。
①最適なコミュニケーションの実践=タテ・横・ナナメの双方向からの円滑な実践。特に目標達成期間でのPDCAサイクルをスパイラルに回していく上で報連相は欠かせない。メンバーとの機会を生かし「いける」との意欲喚起と、遅れがちの対応による未達成を防ぐことになる。
②指導・育成の施し=各自対象、必要対象者の集合研修、OJT、あるいはOFFJTへの参加派遣、自己啓発への支援など計画的に実施し、成長の認め、褒めをプレゼントする。リーダーはメンバーの目標をOKした時から指導育成の責任が伴う。「忙しくて教育なんてできない」との嘆きは御法度である。
③喜働を助長する職場環境の醸成=活性力は良き対人関係、一言が明るく交わされ、いざというときの協力関係が良いことである。メンバーは「上の人に影響受ける」と共に、「環境によって影響される」。この事は二分されるわけでなくリーダーによる創り出される一体現象である。チームに対する評価として「明るい」「元気」「楽しい」「乗りが良い」「張り切っている」「きびしい」との声は「やはりあの人がリーダーだから」との見方が大方である。そこで、リーダーの働き掛けによる良き環境とはどのようなとらえ方があるのか具体的確認条件として列挙してみよう。
◆リーダーが創る漲る喜働を喚起する環境醸成
①互いに率直に意見を述べ合い、後にしこりを残さない雰囲気がある。 ②多少難しい仕事でも、積極的に取り組んでいこうとの雰囲気がある ③何か問題があると皆が協力し合いセクショナリズム(縄張り)責任のなすり付けはない ④問題解決に当たるときは、神経質に考えすぎないで一応の目途が立てば「やってみよう」との気運がある ⑤メンバー間やグループ間の葛藤や対立を隠したり押さえ込んだりせず、明るみにだして処理する事が出来ている
⑥常に「なぜ」と問いかけ、仕事を改善していこうとの創造的雰囲気がある ⑦過去にとらわれず「未来を生み出すには、今ここで何をすれば良いか」との考えで行動する風土がある ⑧皆が仕事について知識や技能を高めるために努力しようとの雰囲気がある ⑨業務の結果をしっかりと検討分析し、次の業務に繁栄させ、常に仕事を前進させようとの考え方・実践が定着している。 ⑩お互いに個性や得意な領域を認め合い・わかり合っていて、新たな事への総意や問題解決には、その組み合わせによって相乗効果を出している
⑪職場の事態や問題の事実をしっかりと捉えた上で、自律的で現実的な行動を取る。そこには一般論や、人の異見を鵜呑みにしない適切な判断をし合う
⑫皆が職場の当面している問題や課題を良く理解していると同時に、他のグループやメンバーの目標についてもよく知っている ⑬他の職場とのコミュニケーションが良く取れており、他の職場と協働して仕事を進めようとの気持ちが強い
如何であろうか。職場診断として活用いただければ幸いである。
さて、組織活動は自分のところだけ良ければ良いということではない。「健全なる精神は健全なる身体に宿る」との言葉があるが、身体を組織(環境)とすれば、健全なる組織としてのキーワードは「コンプライアンス遵守」にほかならない。
◆信頼の誇りはコンプライアンス遵守
●ここまでの信頼は即座に吹っ飛ぶ・・叉・・昨今の企業の不祥事、官公庁の不祥事はなぜ起こるのだろうか。コンプライアンス、規程、ルール・・等と徹底していますとの外向け宣伝は多いものの、いざ迷い時の実践すべき段階では私利私欲、組織常識による判断が優先されている。また、価値観の多様化、個性を生かすとの言葉も多い。そこから起こりうる状態に、自分フアースト、モラールハザートが横行することがある。とすればそれは混乱を招き、秩序ある組識力にはなるまい。まさにガバナンス(統治する)云々が問われる羽目となる。発覚のたびに報道陣の前でのお詫びの末には「今後は組織内のコンプライアンスの徹底を図り・・」と結ばれる。果たして今後はあるのだろうか。信頼の回復は容易ではあるまい。その発火点はいずれにしても、「決め事を厳守する」(法令遵守・コンプライアンス)に対する組織としての自律の徹底不足である。それは個人であり、組織ぐるみと様々である。この自浄力は組織生命を決定するほどの重みがある。
つまり、組織活動が、社会的要請に応えながら健全活動をしていくための仕組みがどれほど構築され、いかにその遵守実践が確実に行われているかである。具体的遵守をなすべき各自の取り組み姿勢を確認してみよう。それには次の6点を徹底することにある。
●各自の取り組みは6点、この指導・支援
①自分が働く企業(各種組織・団体・行政)は、良い企業であり、もっと良くなって欲しい、だから、自らその一役を担う覚悟(忠誠心)で、決して、自己都合の良い行動はしない。 ②そのために「何を、どうする」「何をどうしてはいけない」の決め事を熟読し、自分のものにして、決め事は完全に守る。 ③自らの仕事で「まずい」「気になる」と感じたときには隠蔽することなく、直ちに直属上司に報告、連絡、相談のアクションを起こし、予防、未然対策、事によっては早急な事後対策を仰ぐ。 ④「このくらいは許されるよ」のこのくらいがくせ者、これが段々ゆるみを生じさせる。やがては、「なんでそんなことを」と不祥事に繋がる。自己に都合の良い論法で、守る厳しさから逃げない。どうして迷った時には上司の指示を得る。
⑤周囲にアンフエア(正しさがない)を感じたら、直属の上司に直ちに知らせる。この場合、報連相の形を取る。なぜなら「通報する」との行為に抵抗があったり、以後の自分の立場に不安が起こらないとも限らない。組織内にコンプライアンスの通報部署(窓口)が制定されている場合は、この仕組みを利用すればよい。ただし通報を妨げる諸処の行為には手が打たれていなければならない。特に不祥事が上司や、組織ぐるみの時にはこの仕組みの活用が得策である。 ⑥職務での経験値を積んでいくと経験知が高まる。そこにキャリアが生きてくる。良き方法を提案し、変えられる決め事であれば、発展的改正に寄与させる。
ということになる。リーダーとしては、以上の実践を確実に行うよう指導、支援を施す。それには、
正しく成すべき事・規程・約束ごと・道徳感・倫理観を自ら高め、現実が反している事は即、手を打ち、察しを活かした先を案じた事実には、起きる芽を摘む覚悟の実践が求められる。リーダーの正しい判断力に裏付けされた厳しい感性がそこにいきる。勿論「上(かみ)行えば下(しも)これ見習う」とのごとくリーダーが模範的実践者であることが前提である◆パワハラ・セクハラとの話題も多いが・・。
この話題も多い昨今である。その原点は、日頃の上下の信頼関係が問われる。それは、パワハラ、セクハラと訴える人は下位者がおおよそであるからだ。ここまでの組織活動の確認事項がしっかり出来ているならばこのような事態は起こる事はないだろう。パワーハラスメントとは、厚労省の意味づけでは、「同じ職場で働くものに対して、職務上の地位や人間関係等の職場の優位性を背景に業務の適正な範囲を超えて、精神的身体的苦痛を与える、叉は職場環境を悪化させる行為」と定義している。
そしてセクシャルハラスメントは人の尊厳を不当に傷つけるだけでなく個人の能力発揮も妨げる事から結果的には組織の実績にも影響もする。単なる行為者のみならず、組織としての損害を被る可能性が高い事は十分に理解されている。しかしながら無意識の言動もあるようだ。「男(女)のくせに」「今おいくつですか」「恋人いますか」「スカート良いね。もっとはいたら」・・いかがですか?。だからこそ、ハラスメントの対応は前記したように人間力豊かなリーダーとして自律・自制心を活かした場対応を施す事にほかならない。
◆笑顔のメンバーを生み出す組織は広く貢献する
20才女子プロゴルフ選手が全英オープンで優勝した。42年ぶりの海外メジャーでの快挙である。笑顔でお菓子が大好きだそうだ。インタビューに答えた「タラタラしてんじゃね~よ」のお菓子が爆発的に売れそうだ。先の冬季オリンピックでのカーリング競技でのもぐもぐタイムでの「赤いサイロ」は現地の和菓子店で購入するのは今でも容易でない。また、男子体操で外国遠征に持っていくと言ったブラックサンデーもヒット商品となった。ありがたい現象である。話題選手の出現は、例え、個人競技でもその選手の活躍を支えるチームがそこにある。また、急なる販売対応も送り出す生産、物流・・組織集団の企業の見事な対応がなければ機会損失となる。
企業活動の新たな時代も半年経過した。実を生み出す後期に向けたこの時期、笑顔溢れる活力での組織活動で、達成感の実感を組織(チーム、企業、諸団体)全員の笑顔で愉しみたいものである。そのための確認(提起する)を今回は記してみた。「多く人の喜びを創る」「社会に貢献出来る」とは組織に所属したメンバーの初心の想い(希望)である。この想いが叶うのはリーダーが創る組織集団に寄ることもあろう。
****最近の研修実施は・・****
◎行政折衝・交渉力研修
市、町係長クラスの受講者。8年継続してきた研修。演習を多く入れた参画型研修。説明力、ロジカルプレゼンテーション、デベート的討論を取り入れ実力を体得できる。2日間終えた直後の満足感が嬉しい。どんな業種で今必要な研修である。
◎農業団体理事研修
主催者企画3日間の内1日間の担当。内容髭日誌を参照。
◎建設部品メーカーリーダークラス研修
係長・主任クラスの受講者。変えるパワー発揮の活躍の有り様を基軸に第一線集団の相乗集団、課題解決の取り組み、コミュニケーションスキルアップ等の指導を施す。10名の受講者だからこその密度の高い研修となった。
◎行政技能員研修
調理・用務の第一線現場で活躍する職員層。現状の活躍紹介、関係者からの喜び感謝事例、対人関係、改善事例への取り組み等、相互の親交と更なる活躍ヒントの交流の機会とした。終始熱心な取り組み姿勢であった。5年間継続してきた研修である。
等などです。
(令和元年8月 研修・講演鬚講師 澤田 良雄筆)
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