◆ベテラン層研修に診るおかげさまづくりへの自分磨き
ベテラン社員クラスの研修は勢いがある。担当部門とのパートナーシップを生かした支援指導は2つの柱である。一つは、現在の職責で最高に活躍する事による「おかげさまづくり」と更なる強さづくりを楽しむ蓄えである。二つは人生100年時代に向けて、存在感を得て、お役立ちで生きるための準備期間でもある。要は、生涯にわたってどれだけ「寄って(頼って)きてくれる人」になり得るかに着目した支援指導である。確認してみよう。
①現職の貢献で「おかげさまで」と感謝される施しの貢献とは。
それは経験値・経験智(経験による智恵力)を生かして、企業、上司、後輩に対しての施しである。具体的には
*専門力を活かした新たな業務に貢献する(新しい、初めて、独自のものへの関与)
*経験智を生かした、仕事の改善(創意工夫)を実践
*事実データーに基づき、組織での難しい案件の解決に貢献する
*自身の分身を宿す技能継承の実践
*後輩管理者への補佐、支援に貢献する
*職場の活性化、風土改善にオーラのある言動
*ハイテク技術を生み出す暗黙知の究め
等があり、「おかげさまの」感謝と足跡を残す活躍ぶりが良い。おかげさまは施した相手から生涯に渡って寄ってきてくる、そして語り、語り継がれる財産である。
②将来に向けての決め手(頼られる専門力・人間力)を磨くとは
自信と誇りを持って蓄えてきた潜在能力をより高める事である。具体的には
*専門力(技能・技術)の向上(幅広く、深耕・新鮮)の啓発と学び直し
*趣味・特技の究め(作品制作レベル・指導者の素地づくり)
*社会性に富む対人関係力(職縁+新縁作り)
*社内外の活躍の基本スキルである話力の修得
である。一言で表現すれば、先輩から受け継いだ業務に工夫と改善を加えて進化させてきた今日までの活躍に、自信と誇りを持ち、将来に向けての自分づくりである。
この二つの柱に取り組む受講者にはよく言われる「いまさら感」はない。今と先に向けての息吹が彷彿される。
如何であろうか。業種、職種が違えども共通事項は多い。もし違うとすれば、現職での活躍に悲観的であり、俗に世評化される「肩書・権力がなくなり、手当も減り、部下が上になる、頑張れといったってそりゃー」と自身を粗末にした慰め感である。こんな死事(気持ちが入らない事への向かい方)は実に勿体ない。
◆新たな学びによる年輪を刻む
現状維持維持は退歩する。時の流れの変化はその退歩の幅を増幅させる。古い、通用しない、レベルの劣化が伴うからである。ならばどうする。それは自分磨きを怠らない。学び直しを加味していくことだ。「学び直しとは」以前に学んだものをもう一度学ぶことであり、文科省では社会人の学び直しの推進策も設けている。ビジネスマンが改めて大学、大学院で学ぶ事例は、小生の身近にも多い。
この件はさておきここでは研修現場で紹介される(レポート記入もあり)真摯に取り組んでいる学び直しを汲み獲ってみることにする。それは自ら身を以て蓄積してきた能力に、改めて付加した研鑽である。その研鑽例は4項に集約できる
①多面的思考に基づく提案の構築と伝える能力の学び
さすがの活躍には、従来の経験値(智)がベースとなる。それはKKD(カン・コツ・度胸)で闇雲に振りかざす活躍ではない。トラブル時でも分析による真因を掴み、改善策を施している。トラブルの真因のつかみ出しには多面的切り口での追求が欠かせない。提案書としてまとめあげるには、話す、書く、画く等の伝えるスキルの新たな学びが必ず必要である。そこに身体を動かす行動力のみでなく、智恵力を生かした考働力を生かした活躍がある。
②「なぜ・どうして」の論理的説明力の学び
後継者への支援・指導でも単なる暗黙知で真似させる事では不十分。だからこそ「なぜ。どうしての」根拠・理由付けの説明、説得力が不可欠。そのためには、経験智をどうロジカル化するかそのための、技術の専門知識の新たな学びも必要であり、説明力の磨きも欠かせない。技能継承時にも最も必要とされる指導スキルである。
③共に創作する継承方法のスキルアップ
暗黙知(技能)を形式知(技術)に転換して継承する手段にマニュアル化(標準書、手順書がある。アナログからデジタル化へであるがこの際、見えないことを見える化する表現は言葉にする。さらに言葉の限界(官能=聴覚、味覚、触覚、嗅覚、視覚)で正しく伝える事の難しさは、ビジュアル、オーディオの活用が必要。この技術は若手被継承者の優れた能力である事も多い。従って、どう協力願うかの引き出すセンスの学びが大切だ。この磨きがビデオ、DVD化の共同製作へと推進していく。
④ハイテク化への貢献はIT専門家との意思疎通力を磨く
ハイテク,AI化その元は熟練者の暗黙知である。身体・官能を要素分解、分析し、機械化、メカトロニクス、デジタル化に転換していく。鉄鋼業では、匠の最高称号である「宿老」の作業(動き・官能)を分解・分析しシステム化した事例も紹介されている。この場合でも、熟練者がIT化専門スタッフの意図を正しく理解し、正しく伝える能力がが不可欠である。
今日まで組織発展に貢献し、学び直しによる自分磨きが、今後の伸展にもさらなる貢献ができる、こんな意義あることはない。この事は将来の楽しみ作りの存在的財産としての原石である。原石とは、今後、どう加工し磨きをかけ、応用力を産み出す元である。
◆生涯現役に向けた学び直しの楽しみ
あの人「いてくれるの」「まだいるの」どちら・・。前者であれば生涯にわたって活躍できる生涯現役の人である。勿論活躍の舞台〈働く場)・キャスト〈役割)は変わが頼って来る、寄ってきてくれる人が絶えない。勿論活躍条件にどう対応するかの働き方は主体的立場で決めることはできる。
会社には定年があるが、人生には定年がない。100年の可能性はお役に立てる機会を得て、蓄えた能力を生かして楽しめる事が条件となる。
定年後どうする、50才からどうする、40才でどうする、目に映る論客の提案は多い。いずれにしても「売れる力」なくしてその時になっての得策はあるまい。
定年後の笑顔の人生は3Kである。それは①健康 ②経済 ③決め手である。「売れる力は決め手」である。それは専門力、特技、人徳の3点だ。専門力は既に記してきた。特技は働く傍ら続けてきた趣味の極めによるレベルである。指導、製作、演じる等での稼げる境地。経済力の補填になるし、頼られる存在感は孤独、孤立に際悩まされる事なく心身の健康には最も大事な要素である。周囲を見てみると現職時の経験を生かし、さらなる応用の術を学びなおしている人も多い。いずれにしても「売れる力」なくしてその時になっての得策はあるまい。
そのための専門力に関しての「学び直し」の実践には次の方法がある。
● 社内外教育受講・専門書購読・ 新設備設置時取説の理解と技術習得、不明点は専門スタッフに問い合わせて高める・担当業務に関する資格、免許の取得・他人の意見を取り入れた能力向上・変化対応の基礎技術の研鑽・機器についての特性確認、初めてやる仕事は恥ずかしがらず訊く・新たな整備に興味を持ち技術向上・経験豊富な先輩、定年先輩から酒の席を生かして知識を得る・故障箇所の分析診断の体得・職場内で月1回スキルアップ勉強会主催、指導、受講・専門分野の通信教育受講等などの取組である。
共通している事は、体得された能力を更に「どうして、なぜの論理的追求」。それは幅広く、深耕させ、新たな要素の取り入れである。そのために、素直に訊く言動の実践、体系的な学び直しでの学習会や、資格取得への挑戦。売れる力は「何ができるか」「腕が良い」ことにプラスして指導力も不可欠である。そして、人物的魅力である。それは、技術の施し、提案、指導の貢献はこの人だから訊きたいと寄ってこさせる人物的影響力が前提条件だ。だからこそ決め手の人徳がここに生きる。そして、理解、納得し、共感し自発的実践を促進するロジカルスピーキングも不可欠。喜びを生み出す種を提供する機会を得て、実らせた結果の「感謝のおかげさま」は生涯にわたっての幸福感となる。「学び直し」は自ら求める学びであるから学びの効果は高い。蓄えた能力は誰にも獲られない。原石の磨きが更なる地力の向上となり如何様にも応用力として駆使でできる。
ベテラン社員にとっては、組織での現役を譲ることから得られるライフ・ワークバランス条件を効果的に活用したセカンドキャリア形成でもある。
きょういく(今日行くところ)・きょうよう(今日する用事)を持ち得た60才、70才、80才代の現役で活躍する自分づくりは今この時からの積み重ねである。
◆自己を生かす働きは「学び直し」を楽しみ事による
「学び直し」に関してベテラン層に着目して記して来たが、立ち位置が違えども共通事項(意識・考え方・実施方法)が多々ある。例えば
*新人も半年過ぎた。基本力の完璧実践で得た信用から、任される信頼での活躍の時にもなった。それは持ち味を生かした変える楽しみである。変える前提は現在を正しく理解し改善ポイントを掴み出す。ならば、ここまでの指導内容を今一度確認し、新たな学びを自ら課す。そこには追認、専門基本能力の向上、あるいは学生時代の学び直しもある。単なる流行感情での浅知恵では、上司からの実施のOKはだされまい。
*異動による新規業務でも、新たな学びの累積に加えて、前キャリアとの融合化に向けての学び直しもある。それでなければキャリアを生かした「貴方が来てくれて良かった」とのさすがの実績形成はできない。なぜなら、着任先での期待だからである。
*専門職なら調理、設計、デザイン、芸術、音楽、ビジネス力では社外、国外での修行、留学での学び直しもある。年初の平昌でのスケート金メダリストの小平選手は体力強化の課題をオランダに求めたとの紹介もあった。
勿論、大学、大学院などでの学び直しもあるし、専門学校、機関での学びもある。
企業での制度の活用や、自己投資での取り組み等その気になれば方法は多い。誰しも持っている夢・希望の実現は、具体的目的を定め、PDCAサイクルをスパイラルに回す事での進化の累積である。進化は、変える事、そのインプットはまず学びの実践。「こうしてくれない」「ああしてくれれば」「教えてくれない」との被害者意識での他人の施しを待つ「くれない族」では寄ってきてくれる人はいない。
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「お風呂に入ったとき、ああって声が出るのなぜ?」「お盆ってなに?」「ポン酢のポンって何?」「子供はなんでうんちが好き?」「学校の夏休みはなんのためにある?」こんな身近で素朴の疑問を投げかけ、応えられないと「ボーっと生きてんじゃねえよ」と叱られるTV番組が話題である。回答の解説を聞くとなるほどと苦笑いする小生である。案外「分かっている積もり」の学び直しであろうか。読者諸氏は5才のチコちゃんにしかられていませんか。
ベテラン社員に関する研修お引き受けいたします。ご一報下さい。
■■■■■ 鬚講師の最近の出講日誌 ◆◆◆◆◆
●行政一般技能員研修 2クラス
現業職で活躍する職員。昇級に伴う意識、活躍ぶり、住民満足への更なる取組、改善実践法など柱だてしての1日研修。今回は2クラス。講義で活躍ぶりと有り様を共有化し、ワークショップで活躍ぶりの情報交換、対人関係の自らの働きかけを掴み出し、今後の活躍に向けての方向性を提言する進め方。日常座る、聴く、話す事の少ない受講者が活力を醸し出す姿が嬉しい。講師と受講者、受講者同士が一体感を創れた研修であった。当市始め他市での技能者研修のキャリアがかせることは小生にとってはハッピーである。
●大手製鐵所ベテラン社員研修
55歳を柱に、現場職場で活躍してきたベテラン層が対象。担当部門(2日間)の1日研修。現在までの貢献の確認、今後の貢献のありよう、将来に向けての今からの取組について学びあう。事前レポートの提出を依頼し、その記載内容を軸に進める。ベテラン層の凄さを確認し、更なる自己改革、技能継承指導力向上、後継役付者の支援、更なる自己磨きによる定年後の活躍の基づくりを指導し、今後の活躍の方向性は分科会形式でのグループ討議でまとめ上げる。発表に対する担当部門からの適切なコメントと助言がより効果的に以後の活躍に向けてのエールとななった。(鬚日誌ご参考に)
●電気製品部品メーカー中堅社員説明力スキルアップ研修
任されての活躍は協力、提案の基本能力の説明スキルは必須研修。業務推進とコミュニケーションの重要性。正しく伝える説明の基本条件。演習による確認と改善ポイント。基本スキル話力と理解・納得を高める工夫を重ねての1日研修。できると自信ありの未熟さに気づき、スキルアップに熱心に取り組む研修は楽しい。
●スピーチ実践講座
社会教育講座。お題拝借、準備したスピーチを演習、各自へのコメントを施す。話力アップの心の持ちようは「運が良い」とのキーワードを言いきかせること。このテーマでの講話を施す。
●小集団活動の支援
小メーカー企業QCサークル活動支援、指導、改善の決定による実践、改善結果のの評価、再改善の段階。実践活動はメンバーの役割分担による協力が重要。この協力はサークル間で差が出る。この支援をきめ細かに施す。次は成果確認に入る。
等々
夏休みの時期、暑い日々での熱い研修を終えて一息ごのシャワーは心地よい。もうすぐ秋、過ごしやすい研修にも良き時期。 各社,各所様の人材育成の年間計画をの実施に際して、ご相談に応じる事を第一歩として支援(研修企画・講師)しております。気軽にこのメールでお声がけ下さい。
(平成30年9月 研修・講演鬚講師 澤田 良雄提供)
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