暑中お見舞い申し上げます。
◆「人」「感謝心」の経営手腕に注目
今年の安全大会ではM工務店労働災害防止大会に臨席し、講演させていただいた。M社は創業84年、企業イズムを「私たちは建設サービス業としてホスピタリティの心を持って住空間の創造、改善、維持管理を通じて社会に貢献し、全従業員の物心両面の幸福を追求します」している。この哲学を軸に、大工としての建築請負業から今日の総合建設まで発展した企業である。
そこには「お客様への感謝の心」住宅購入後の数十年にわたる「お客様の絆づくりである」の実践の重ねであるという。大会も110余名(協力会)の臨席で盛大に挙行されたが、進行、ご挨拶、、接客、そして参加者の協力的対応も流石であった。歴史を重ね、企業イズムが徹した組織集団はやはり本物の感がする。
講演の話題に同業企業であるS工務店を紹介した。先代社長とのご縁で人材育成を担った企業である。現社長は、かつて”TV大工チャンピオン”に輝いた実績を持っている。勿論企業ぐるみの勝利である。先代からのこだわりは凄い。総檜それも天竜産、7寸の大黒柱もその一例。40余年その軸は「家づくりとは「ありがとう」の連鎖」である。仕事を下さったお客様への「ありがとう」良い仕事をしてくれる協力業者さんへの「ありがとう」家作りに悩み、挑戦してくれる社員への「ありがとう」そんな姿を見たお客様が掛けて下さる「ありがとう」この小さなありがとうが、やがて大きな感謝の渦となるとの考えだ。地元を中心に4,000組近い顧客様を獲得してきた実績がそれを実証している。
両社とも大企業ではない。30余名社員と協力会社の企業グループである。共通しているのは「人」「感謝心」が中心である。M工務店の基本行動として「日常の5心」がある。紹介してみよう。
「はい」という素直な心。「すいません」という反省の心。「私がします」という奉仕の心。「おかげさまで」でという謙虚な心。「ありがとう」という感謝の心」
である。ご存じの読者も多いであろうし、既に活用している企業もあろう。小生の倫友の幼稚園でも掲げている教えでもある。とかく「俺は職人だ」の仕事集団で、人、心に軸を置いた企業経営を推進してきたことが安心と信頼を重ねてきているのである。
◆安全確保にコミュニケーションの円滑化なりと提言
講演内容もヒーマンエラーに着目し、「コミュニケーションの円滑化が決め手」とした。その
①は日頃関わる人との「一言の交わし」挨拶であり、五心の交換である。好感関係は仕事に向かう心を安定させる。
②は事と事との繋げである。その極意は「観る」で感受する予知力による未然防止の報連相である。
③は、技と技のコミュニケーションであり、職人技の連携である。それは「相褒め」の実践とした。
このコミュニケーションが必要なことを、必要なときに、必要な人に施されていれば邪念、いらいら、いらぬ不安・心配事が発生することなく最高の心身で、仕事に取り組む事ができる。そこには不安全行為の潜在要因はないはずだ。と提言した。
なぜ、ケガする方法での業務をさせることはない、能力なき人に業務はさせない、ケガ発生の環境での作業をさせることはない、勿論、規則、規律、管理も十二分に決めてある。ならば、起こりうるのはその人の、最高実践のなさであると。それは集中心不足であると断じているからである。その一因にコミュニュケーションの不備があるとの切り口である。お気づきの通り、紹介した2社の実践事項に共通しているのである。そこには、災害事故なき本物の企業活動があると認識した。つまり「技」の専門力と「人」が醸し出す企業文化の強みである。この強さが持続的経営を長年重ねることの根源であろう。
◆本物の企業条件
まず 経営の文字に着目してみよう。「経」とは商いの道筋、つまり経営の軸である。何のために創業したのかの原点や、現在の企業活動の目指すところ、将来に向けて伸展する考え方の規範である。これには創業精神、経営理念、社是、社訓、モットー等がある。そこには、何のための経営か、与えられた使命は何か、社会的責任はどう考えるか等を経営者のロマン、夢、ビジョン、信念と人生観、思想、経営哲学として構築されている。従って、諸処の事の善し悪しの判断はこのことを基準として下される。バブル時でも本業以外に手を出さなかった出講企業もある。
「営」とは、「経」をどのように実現していくか、商いの方法を編み出すことである。方針(中長期・年度)、戦略、戦術、目標である事は周知の通りである。この「営」が環境の変化にタイムリー(先見・現)に示され、その精度が良ければさらなる企業の強さづくりになる。
経を商道、営を商法、経は不易(変えない)、営は易(流行)(変える)と意味づけされる事もある。いずれにしてもこの「経」と「営」が社員一丸となって企業総力としていくことにより企業文化となり、他社よりも先んじた強みづくりとなる。そこに本物としての信頼、安心の評判力となっている
。
◆その柱は
①売り物(専門力)=製品、技術、サービス、システム、品質、納期
、コスト対応等
②企業文化=組織機能、品格、凡事徹底、育成環境、おもてなし、5S、法令遵守など で括り、
◆為すべき条件は次の三本柱である。キーワードを付して記してみる。
①真の市場ニーズに合致しているか
*顕在ニーズだけでなく潜在ニーズに対応、正しい、まともな提供、利他主義
②本物の技術
*暗黙知(極めの匠・熟練・カン・コツ)と形式知 (標準化、機械化)融合し、高度の技術開発
・改革、成熟度、機能美、こだわり、独自、卓越・・。
③顧客に心を込めた社員力
*経営理念の共有、自社への誇り、誠実、高い意欲、豊かな心、勤勉、協働、実践、学ぶ心、
おもてなしの知恵、マナー・・。
ということである。 読者諸氏の持論はいかがであろうか。時として企業の強み、弱みを問うことがあるが、そのキーワードに活用することも多い。
◆宮間主将の言葉に共感
先の女子サッカーW杯でなでしこジャパンが準優勝に輝いた。連覇を目指しての闘いは前回準優勝の米国。残念ながら5-2と敗れた。各紙の記事に眼を通してみた。「試合が終わると、宮間はベンチに向かい、途中交代した岩清水を抱きかかえた。仲間の心情を思いやる主将の眼に、止めどなく大粒の涙があふれた。」と筆した記事に思わず釘付けとなった。そして感動した。宮間主将は「仲間が誇り」と公言しているがまさに本気・本心・本物である。しかしながら、チーム総力は必ずしも世界一の安定した強さではなかろう。ふと、宮間主将の決勝進出を決めた時の言葉に「ブームでなく文化にならなければ」とのフレーズが思い起こされる。そういえば、芸人でも一発屋といわれる人もいる。一時的ブームを呼ぶがいつの間に見えなくなる。下位では強いが、上位に当たると歯が立たないスポーツの世界もある。安定した強さを維持、進化させていくことなくして華の持続や勝ち続ける事はない。
◆老舗企業への期待
企業も「環境適応業」さらに「環境創造業」と称される如しである。本物だからこそ、根をしっかりとはったしなやかな竹のように時としての荒波、風雪をしのぎ新たな強さを創造していくのである。2社もそうであろう。90年、50年さらに老舗として名を馳せていく事であろう。老舗とは伝統と改革の積み重ねといわれる。創業100年以上が老舗ということならば、我が国では10万社以上あると推定され世界でも例がない。その要因は諸説があろうが、創業者の顧客、社員、協力者に向けた人との真の思いが、絆となり時世の変化に見事に対応する総力を高めてきた。そこには家族的経営も含め日本的経営の強みをいかした「新らしさ」を最適に融合してきたとも考えられる。
大会宣言で「妥協しない、放置しない、黙認しない、お互いの厳しい指摘
」の一項が宣言された。本気、本心から「技」「人」「感謝」の最高実践される本物の活躍ぶりがこの宣言であろう。だからこそ、老舗企業への道のりも明るく見通せる。期待の心を躍らせ、新たな楽しみを秘めた昨今である。
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